一市井人が考えたこと

会社員が考えたことを綴ります。

読書感想文『宿澤広朗 運を支配した男』加藤仁 著

ラグビー日本代表監督にして、三井住友銀行 取締役専務執行役員。二足のわらじを見事に履きこなした宿澤広朗の伝記。

 

ラガーとしての宿澤についての本はいくつかあるが、バンカーとしての宿澤にもしっかりページを割いたものは本書くらいのものだろう。

 

「銀行員」といってもいわゆる営業店での貸付ではなく、ロンドン支店でディーリング業務に携わったり、企業へのアドバイザリー部門を立ち上げたり、大阪本店営業本部長として松下電器産業とのタフな交渉にあたったり、史上最速クラスで役員に昇進する等、輝かしい経歴の宿澤。しかし、具体的なエピソードをうまく組み立てられているので、ピカピカの経歴の裏にある労苦が血となってページとページの間からにじみ出てくるようである。

 

勝ちにこだわり、人並み外れた努力を重ねた。宿澤。なぜここまで勝ちにこだわることができたのか、筆者なりの分析とその論拠が示されているのがよい。

 

偉人が成したことを賞賛することはたやすい。しかし大切なことは、偉人の生き方を自分の生き方の参考にすること。そのためには、偉人がなぜそうしたのか、どのような動機でそうしたのか、を知る必要があると思う。その意味でも、本書は宿澤の行動や成果のみならず、そこに至るまでの思考や経緯が、分析を織り交ぜながらしっかり書かれている。

 

心に残った箇所をここに残します。

 

努力は運を支配する

 

善戦でおわってはいけない。勝たなければ駄目だ。 

 

“絶対に勝て”とか“死ぬ気でがんばれ”とか言うのは比較的やさしいことである。また、そのような言葉で選手の気力を向上させることも容易な場合がある。しかし本当に必要なことは“絶対に勝て”ということより“どうやって”勝つのかを考え指導することであり、“がんばれ”というなら“どこでどのように”具体的かつ論理的に“がんばる”のか指示することではないだろうか

 

商売は戦いである。戦いには勝つことのみが善である

 

チャンスだ、と皆が騒いでいるときは遅い。それでは儲けが薄い。それ以前の潮目の変わりどきを見ろ

 

リスクをとれる強気な人間は数十人に一人くらいです。その強気な人材を発掘するのが、私の部長としての仕事です

 

ライブドアは)グレーな部分を攻めて収益をあげている(中略)競技スポーツでも、勝つためには、それがポイントです。そこまでやる。やるけれども、ルールで決められていない部分なのだから、「フェアプレイの精神」でやる。頂点での争いは、勝か負けるかの差がほんのわずか、むしろないに近い。グレーゾーンにもこだわるということは、それだけ競技を知り尽くすということでもあり、勝つためのこだわりです。言い換えれば、万全の準備というのはそこまでの広い対応をしておくことで、成し遂げられることだと思います

 

宿澤広朗 運を支配した男 (講談社+α文庫)

宿澤広朗 運を支配した男 (講談社+α文庫)